after craft_新入荷情報

two_crafts2006-01-11


新入荷、といってもしばらく経ちますがジャスパー・モリソンのカトラリーを紹介します。concrete craftではオープンの頃から扱っていて、実際にカフェで普通に使用されてもいます。after craftでは確か先月あたりから取り扱い開始中。

カトラリーというと普通はスプーン、フォーク、ナイフですが一般にデザイン的にはスプーンの人気が高いようです。ジャスパー・モリソンによる伝説的なスプーン本があるほか、スプーンをテーマにした書籍は結構多い。スプーン表紙の本も多い。フォークやナイフをテーマにした本はあまり聞いたことがありません(いやムナーリのフォーク本がある)。でも個人的には3種類の中ではナイフが好きです。スプーンは丸くてかわいすぎるしフォークは食べる行為をあからさまに連想させてしまうのに対し、ナイフはシンプルで良い。お箸の国の人だからか。そんなことはともかく。


ジャスパーのスプーンはさすがです。たぶん3種類の中で一番個性がある。すくう部分が縦長に見えますが、縦長というよりは左右の出っ張りをなくしたかたち。だから口の中に当たりにくい。とても使い心地いいです。嘘だと思ったらconcrete craftでカレーなど食べて試してみて下さい。

ジャスパーはフォークもいいです。いたってシンプルなのに刺す部分が十分に深くて、何を食べるときも快適。通常シンプルなフォークは美しいのですが、この刺す部分(名前あるんでしょうか)を浅くしてしまうと使いにくくなる(うまく使うのにコツが要る)気がする。あとこのフォークについては、柄の部分の縦方向のカーブがスプーンと微妙に違うのも不思議。たぶん左手に持つ時の指の収まりを考えているのではと。このカトラリーシリーズの開発に5年かかったというのにも納得。

それでジャスパーのカトラリーでもフォルムが一番きれいだと思うのはナイフ。刃の部分が一般的なナイフより短めだと思うのですが、必要十分な長さ。ミニマリストぶりが発揮されているのかもしれないけれど、刃を短くすることで安心感を演出してるのかもしれない。こんなご時勢ということもあるので。それはそれとしても、このかたちは流木や動物の骨のような自然な感じがしてきれいだなーと。

concrete craftでディスプレイされているブルレック兄弟やヘラ・ヨンゲリウスがデザインの新しいところを切り拓いているイメージなのに比べ、ジャスパーはデザインの基本を追求している感じ。現代にもジャスパーのようなしっかりしたデザイナーがいるから、一方で実験的なデザインが安心して生まれえる面もある(パトリシア・ウルキオラははっきりとそんな意味のことをいっている。ジャスパーがいるから自分はもっとフェミニンになれる、と)。ただジャスパーはいわゆる時代を顧みない我が道を行くタイプのデザイナーではなくて、時代を掴みつつ、それをふまえてあえてベーシックなデザインをやっているように見える。反逆児といえば反逆児。マルジェラの服が好きらしいあたり(目撃例あり)もちょっとそんな感じ。そもそもが多感な時期をパンク全盛(またはポストモダン全盛)のロンドンで過ごした世代でもあって。


長くなってしまい失礼しました。今年もよろしくお願いします。(after t)